住み心地の良さ環境や体に及ぼす影響も無く、木造建築は日本古来から愛され大切に守られて来ました。近年は、木造住宅の構造も様々な工法が考えられ、とても堅牢で地震など災害にも信頼が高いものとなりました。その材料となる木材も色々な種類と加工が施され、耐久性が高く様々な用途で建築材料に持ち入れられております。しかし、どうしても大敵となるのがシロアリです。
一般的には、ヤマトシロアリや羽根アリなどが木材に発生し直接的なイメージで食い荒らすと思われ、薬品など用いて予防策を講じてますが、実際そのメカニズムについては殆ど理解されていません。
今回は、そのシロアリが害を及ぼすメカニズムに触れて見たいと思います。
シロアリの被害は、比較的新しい建物でも腐食が進行していたり、また何百年経っても腐食しないケースもあります。それを左右させるポイントは木材に含まれる水分である含水率によるものと考えられます。
現在の建築材料に使用される木材は、JAS規格の適合を受けた含水率25%以下に押さえた乾燥材が使用されます。木材はしっかり乾燥させることで材料の変形や腐食をしにくくします。ではJAS規格を使えば安心と言う訳なのか、そうではありません。それでは含水率が低いJAS規格材を使用しているのになぜ腐食するのか、そして腐食する時はどのようなメカニズムで腐食するのか、そして何に気をつければ良いかのかというところに迫ります。
それを知るにあたって、木材のことの前に自然環境の中にいる菌のことについて触れます。自然界にはいろいろな種類の菌が浮遊しています。その中で今回関係する腐食菌と呼ばれる木材に付着し繁殖する菌があります。腐食菌はどの木材にも繁殖するわけでなく、木材が乾燥していれば付着しても問題ないのですが、湿気を帯びている木材に付着すると腐食菌が瞬く間に繁殖します。基本的には建築木材は腐朽菌が繁殖しないように、含水率を落とし乾燥させて使われますが、お風呂や洗面所の水気が多い所、居室内でも洗濯物を干したり、換気が無い部屋の窓を閉めっぱなしにして結露を起こしたり、水分が多い部屋があればそこに湿気が溜まることとなります。それがやがて木材が常時湿り気を帯びることとなって腐食菌が繁殖して増殖させ腐食菌の巣と化してしまいます。
最近の建物では、ユニットバスや24時間換気システムなどで湿気を起こさない最先端の技術があります。しかし、そんな技術を導入した建物でもシロアリの被害は消えません。近年に多いのが高気密高断熱の内部結露が原因による腐食などがあります。内外の温度差が激しくなれば、熱貫流しやすいところに集中して結露が起こります。そこが風通し悪ければ常時、湿気が溜まり腐食菌が繁殖するという仕組みです。最近の建物といっても中途半端な施工をすれば逆効果にもなります。徹底した高気密高断熱、それでも結露した箇所ができたと想定して調湿作用を施した仕組みが必要と考えます。
結露が発生しないようにと言う意味で、本当の結露の怖さは湿気から繁殖する腐食菌に結びつきます。
今回は腐食のメカニズムのことなので、特に建築技術について触れませんが新築をご計画中の方は知っておく事が必要かもしれません。
さて、ここまで腐食菌が付くところまでの説明で、まだシロアリの被害には至りません。
腐食するまでのメカニズムはこれからが面白くなってきますが前編終了です。
次回は「シロアリの餌であるバクテリア」について、生物学的観点に迫ってメカニズムを分析します。
Toshiaki.N