さて、木造住宅における大敵のシロアリ。前回は湿気に付く腐朽菌のお話でした。
腐食菌という言葉で登場した木材を腐食させる菌である木材腐朽菌(もくざいふきゅうきん)は、カビの胞子や菌糸で繁殖する寄生菌になります。担子菌類、子のう菌類など種類がいろいろありますが、木材に付着するものでは褐色腐朽菌と白色腐朽菌があり、住宅の木材腐食に関係あるものとしては木材を白くしてしまうもので白色腐朽菌があります。褐色のものは褐色腐朽菌であり木材の変色ぐらいで木材の耐久性に害を及ぼすものではありません。腐朽菌は見た目の色で区別でき、住宅に害を及ぼす殆どが白色腐朽菌です。
しかし、菌だけでは木材は腐朽(腐食して無機化すること)しません。
そもそも木の成分はセルロース、リグニン、ヘミセルロースといった難分解性の炭水化物であって、条件が温度20℃以上、湿度85%以上、含水率20%以上の高温多湿の環境ができれば木材腐朽菌は繁殖します。そこにバクテリアが発生し、更にそれを餌とするシロアリがやってきます。そこは、シロアリにとって絶好の繁殖場となり最終的には木材は全体が無機化されスカスカの状態になり、それは木材でなく既にもう別の物質です。
白アリは一般的にどんな土壌にも存在し、森林であろうが家であろうが、木材が腐朽しバクテリアが成分を分解してしまえばシロアリにはとても良い餌場となりどんどんやってきて増えます。
我々の目に見えるところでは、シロアリだけが害を及ぼしている様に見えますが、バクテリアが発生した時点で木材の成分は分解され木材構造物としての機能は失われています。
果たして木材は、建築材として適当なのか。
木材や衣服の綿などの植物繊維は、主成分がセルロースといってとても溶け難いたんぱく質成分です。それを正しく製造加工して使用すれば寄生することもなく、自然界にはやさしく、人が触れても心地よく最適な素材です。そんな植物繊維は、建築材はもとより家具、衣服の日用品まで幅広く利用されていて、我々の生活には欠かせないものです。どんな物質でも欠点はありますが、木材の場合、高温多湿の環境である腐朽の条件を作らなければ心配することはなく、そして加工しやすく、せん断圧縮応力に優れ、住宅材料としては最適なのです。
物質には破壊や分解があり、建築の構造材としては木材の他に鉄やコンクリートがあります。どれも材の使用する環境が悪ければ破損していきます。その土地、その場所の風土にあった材料を選び、定期的にメンテナンスを行えば、何十年、何百年でも建物の状態は変わりなく維持していくことが出来ることでしょう。
Toshiaki.N