こんにちは。家のコトは生きるコト※1 コーディネーターの滝島です。
「家を建てる」とき「暮らしをつくる」を意識して、暮らし・家事の目線から「いえのこと」を考え、お施主様の理想の家づくりのお手伝いをしております。
さて、今日はガス衣類乾燥機「乾太くん」のお話です。
最近はかなりの確率で、お客様との打ち合わせ時に話題となるリンナイの「乾太くん」ですが、衣類乾燥機自体は昔からありますし、全自動洗濯機にも乾燥機能があるのになぜ今「乾太くん」人気なのでしょうか・・・設置をご検討中の方へ、費用面以外の別の角度からヒントになりそうなコトをお伝えしたいと思います。
まずはその性能から!リンナイのHPをチェック!
【6kgの洗濯物を約60分、9kgの洗濯物を約90分で乾燥。電気式の約1/3の時間で、家事の時間を大幅に短縮できます。】
早い!そう、何と言っても時短なんです。そして
【太陽よりも、ふんわり仕上がる。ガスならではの強い温風で乾燥させることで、 繊維が根元から立ち上がり、新品タオルのような仕上がりに。】
そう!”ふんわり感”!実際にお使いの方の感想で最も多いかもしれません。他にも”売り”はありますが、機能性能面ではこれだけでも十分な気がします。育ち盛りのお子様がいて山ほど洗濯物があるご家庭はもちろん、花粉症や洗濯時間の関係で外干ししたくない方や、とにかく感覚的に生乾きが嫌な方などに大変魅力的です。
家づくりでは、家事の考え方によって間取りが変わりますので、建築家とともに家事動線などを検討していく作業はとても大切になります。
・・・そうです!「乾太くんをどこに設置するのか」が重要ですね!ということでレイアウトについて考えましょう。
下記の図は弊社の施工例です。当たり前ですが、乾太くんは洗濯機と同じ場所に設置されています。黄色が洗濯機の位置です。施工例でとても多いご提案としては浴室の横に洗面脱衣室があり、そこに洗濯機を設置するスタイルです。
例① 洗面+脱衣+洗濯機+収納
こちらはしっかりとリネン収納があるので、脱衣のスペースにゆとりがあります。
最近は洗面所と脱衣所を分けるスタイルや、洗面脱衣室を「ランドリースペース」として、部屋を広くする方も多くなりました。同時に、リネンや下着などの収納場所がしっかり確保されることで、どのような家事動線になるのか想像できるようになります。細かいご提案は”建築家との打ち合わせならでは”と思います。
例② 洗面+洗濯機 / 脱衣室+収納(アイロン)
例③ 洗面所 / 脱衣室+洗濯機+収納(アイロン)
例④ 洗面+脱衣+トイレ /ランドリースペース(アイロン・室内干し)
なんとトイレも含む4つのスペースが動線上にあります。
(撮影 馬渡孝則)
例⑤ 洗面 / 脱衣+洗濯機+収納 / 屋根付き外干しスペース
そして特に乾太くん設置でおすすめなのは、こちら!
洗面+脱衣+洗濯機+収納ですが、洗濯機と乾太くんを横並びに、洗面台の横に設置していて、乾太くんの下には引き出し式の作業台もあります。(青が乾太くん)
では最後に、設置した乾太くんは”誰が”使うのか、を考えました。
2021年に「家事から考える住宅と暮らし」という建築家・山田紗子氏が、乾太くんをご自身が設計した住宅に採用するにあたっての記事※2を読んで、心底共感したことを思い出しました。
「設計活動のなかで感じるのは、共働きの世帯が増えたことで、家事はみんなでするものになったということです。これまで「家事はお母さん(女性)がするべき仕事」というイメージの時代もありましたが、今は施主と話していても、家族の誰かひとりが家事業務のほとんどを行うようなスタイルは減りつつあるようです。暮らしを求めるかたちはそれぞれの家で異なるものですが、機能性が求められる家事空間と、リラックスしたりコミュニケーションを楽しむための生活空間とがきれいに分けられているより、それらが混ざり合っているほうが、私は心地よさを覚えます。」
こちらで設計された家の乾太くんは、最もパブリックな場に設置されたそうです。家族一人一人が自分のことは自分でやる方針のため出入りしやすく、バルコニーの役割はデッキチェアを置いてくつろぐためで、洗濯ものは干さないという潔さです。
そもそも”家事とは生きること”であり、家族みんなで担っていいものと考えたとき、時間に縛られず操作が簡単で、家族の誰もが「できる」ようになる便利な家電は、強い味方。
これまでバックヤードに設置するのが当たり前だった洗濯機をパブリックなスペースに配して、日々の暮らしのなかに溶け込ませる考え方は、今後の家電デザインにも影響があるかもしれません。
ちなみに生活哲学者の辰巳渚は、家事についてこのように書いています。
「ほどほど」は「ちょうどいい」※3私は、いつも完璧には暮らせない・~略 でも、くつろいでいられるくらいには片付いて清潔な部屋でいたい。そのくらいに働くのは嫌じゃない。そのくらいの「ほどほど」を保つために、自分が動きやすいきっかけを、毎日のくらしのなかから見つけて、(略)自分なりのほどよい加減を見つけることで、無理なく、気持ちよく、楽しく暮らせるようになると思います。
ひとりひとりが「ほどほど」と考えると気持ちが楽になりますね笑
ところで私は室内干し派なのですが、乾太くんを持っていません。一時期購入を考えたこともありますが、洗濯機の周りにガスの配管が無いこと(これは重要)と、家事動線上に物干しスペースがあり不自由がないこと。さらに子供が独立して洗濯物に追われることもなくなったため、必要性を感じなくなったためです。けれどもし「家を建てるとき」に今の乾太くんがあったら、きっと設置していたなと思います。
今、大人気の家電「乾太くん」。人気に惑わされずご自分の考えでぜひ検討してみてください。それでも購入を悩んでいる方は、将来設置できるようにガス配管のみを用意したり、あらかじめ設置スペースを確保することなどを検討して後からゆっくり、はどうでしょうか。
最近は『乾太くん専用の設置台』も増えてきました。重量も考慮されての設計なのでぜひご検討いただきたいです。そしてなにより建築家(プロ)と相談して決めることをお勧めします。
さ~て、あなたは乾太くん、採用しますか?
次回もお楽しみに!
※1「家のコトは生きるコト」とは、生活哲学家である 故 辰巳渚 が主宰する「家事 塾」の理念です。筆者は家事塾での学びをもとに記事を書いています。
※2 住宅特集 2021年4月号 新建築社 より抜粋
※3 「ほどほど掃除のしかた」辰巳渚著 小学館より 抜粋